映画『ザ・コーヴ』、何がどう問題なの?を考えてみた | 〔空色庵〕松本典子のブログ「飛ぶ♪ハナシ」
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映画『ザ・コーヴ』、何がどう問題なの?を考えてみた

【2010.05.20 Thursday 22:34

  
 『ザ・コーヴ』試写にお邪魔した。和歌山県加太町のイルカ追い込み漁(猟)を追ったドキュメンタリーで、第82回アカデミー賞では長編ドキュメンタリー賞に……と聞けば、ああ、あれね、と思い当たる方もいらっしゃるだろう。日本での上映については加太町の漁業関係者からの反対などがあったのだけれど、今年6月下旬には公開される運びとなった。




 

 大阪の食文化にどっぷり浸って育った私にとって、クジラを食べることに違和感はない。おでんにはコロ(クジラの皮下脂肪を干したもの)を入れたい〜と心から願うし(格別なるおダシが出るのねん♪)、はりはり鍋も冬を満喫できる味。イルカを食べたことはないけれど普通に、「そっかー」と。日本各地の漁村ではたんぱく源だったんだなあと思う感じ。


 だから、クジラやイルカを獲るなと躍起になる人たちには「頭ごなしに人でなし扱いするってのはいかがなものだ?」とずっと思ってきた。一方で(浅い知識ながらも)調査捕鯨の必要性について、鯨肉の横流しについてなど問題点も少なくないとは認識している。


 そんな私が『ザ・コーヴ』を観た。


 で、その考え方は変わったか? 答えは、「いいえ」。私の場合は。


 60年代の大人気番組「わんぱくフリッパー」に登場するイルカたちの調教を担当したものの、後にイルカ保護活動に転じて現在にいたるリック・オバリー氏のイルカ救出大作戦。彼がイルカをとても大切に思う気持ちはよくわかった。解放してやるためには自らが刑務所に入ることも厭わない、その心意気はすごいと思う。撲殺されるイルカを見るにみかねて告発すべく盗撮を企てる彼なりの情熱にも敬意を表したい。


 けれど、太地町がなぜイルカ漁をしてきたか、非難されてもなぜ続けるかについても少しは追究してみてほしかった。イルカ漁に誇りを持つ太地町の漁師たちもまた重要な登場人物である以上(日本の上映では顔にモザイクがかかってはいるものの)、その言い分を真正面から写してみてほしかったのに。これじゃ、是非を判断するにもあまりに材料が少なすぎ(もちろん、スクリーンの中身だけで判断できないことは山ほどある)。


 音楽やカット割で、彼らが盗撮へと向かうシーンなどはなかなかなエンタテイメント。けれど、その演出がドラマティックになるほどに、観る側としては冷めてしまう。一方的に熱くなる議論や行動に、そうたやすく納得なんてできませんってば。

 
 このもやっとした気分の正体を考えてみた。そうしたら、イルカが解放されればそれで済むのか?という疑問にぶち当たった。


 たとえば、太地町の捕鯨を非とするならば、食糧問題全体を考えなきゃいけないのではないかな。食となる生き物に感謝して、それを血とする、肉とする。スーパーでパックに詰められた食肉たちに慣れてしまった我々が、その肉がどんな過程を経て届いたか?無駄にはしてないか?などをどれだけ意識しているだろうか。その意識を大切にしてないのだったら、牛や豚、鶏たちだってイルカと同じくらい哀れではないだろうか。ましてやフォアグラのためのガチョウやカモ……少し横道に反れた?


 そんなに獲らなきゃいけないの?はイルカだけじゃなく、食肉にされるすべての動物について考えなければ不毛なテーマだと思うのだ。その先にはエネルギー問題だって繋がっているはず。どうやって作られ、我々の元に届くのか?無駄にはしていないか?安易に考えて(=原子力に頼って)いいのか?などと。また、イルカをエンタテインメントに使うショービジネスや、それを無邪気に喜んで観るというのはどういうことか?も掘り下げていく必要がありそうだ。


 上映を反対する、自己規制するなんて、東京都の非実在青年問題と同じくらいナンセンス。表現は自由。臆せずに上映すればいいと思う。けれど……一方的な正義感が気分をげんなりさせるのが残念だ。こんなにも単純な(未成熟、と言いたいくらいな)視点で撮られた作品が長編ドキュメンタリー賞を取っちゃうなんてのもがっかりで。いわゆるアメリカ人の悪いクセ的な正義感?と訝ってしまう……ブツブツ。


 とはいえ。非難も論争も覚悟して公開を決定したのであろう日本での配給者が、「公開して、動員して、ハイおしまい」とは考えていないだろうと期待している。『ザ・コーヴ』を観ることがさまざまな議論の出発点になるような、そんな形での公開になったらいいのにな、と思った次第。


 正義って難しい。……そういえば、話題のNHK「ハーバード白熱教室」、サンデル教授の「正義とは何か」の授業。最初からちゃんと観たら手がかりになるかしらん?


◆『ザ・コーヴ』公式サイト→ http://thecove-2010.com/



JUGEMテーマ:近日公開!映画

author : m-noriko
| 観てみた | comments(5) |

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【2017.01.12 Thursday 22:34
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この記事に関するコメント
AUSnoriさん、
コメントありがとうございます。
旦那さん、やさしい方ですね。ふふ。
私自身、
ベジタリアンへの造詣(?)はそれほど深くなく、
さまざまな動機があるんだなー、と新鮮でした。

私も、「安ければいい」という考え方は、
結局のところ自分たちの首を絞めるだけだと考えています。
そのときだけよくても……ですよね。
調査捕鯨のことは、私も少し調べてみたいと思っています。
捕獲した鯨の肉が、とんでもなところに横流しされているなど聞きますし。。。

オーストラリアでの『ザ・コーヴ』事情などありましたら、
また教えてくださいませ!
| まつのり | 2010/05/31 9:44 PM |
はじめまして。こんにちは。
オーストラリアでベジタリアンの旦那さんと住む者です。

こちらでは捕鯨反対色がかなり強く、よく新聞やテレビで報道されます。

松本さんの仰るとおり、クジラやイルカだけでなく
全ての食料となる生き物に対して考えないといけない問題だと私も思います。

もちろん「動物が好きだから」という理由でベジタリアンになっただんなさんも同じ意見です。

それと同時に「各国には独自の食文化があり、それを他国が強制して排除しようとするのはいかがか」という気持ちもあり、それをだんなさんに言うと

「調査という名目で結局は食用としている日本政府は姑息だ」と。

確かに。
何の調査なんでしょう?

ベジタリアンの人と暮らしているのに、私自身はなかなかベジタリアンになるという意思が持てません。
が、おかげでいろんな事を考えるようになりました。

この映画、捕鯨問題などを通じで、少しでもたくさんの人が
「安ければなんでもいい」という意識をなくして、
食を見つめなおすきっかけになれば。
そして自分もそのうちの1人になれればいいなと思っています。

長くなりました。
すみません。
| AUSnori | 2010/05/27 5:06 PM |
久美子さん、
コメントありがとうです。
調査捕鯨は、モノを知らない私ですら
「なんの調査だよー」と訝るばかり。苦笑。
しっかし。
捕鯨のことだけじゃないよね。
正義はひとつじゃないかもしれないし、白に見えることが角度変えたら黒とかグレーとかになりうる、なんて全然考えない、
その自信はどっから来るんだ〜?と心底不思議です。トホホ。
相手を知ろうとする好奇心とか、びびるココロとかね、必要だよね。
観るともやもやする可能性も大なんだけれど(苦笑)、
静岡で上映あったら観てみてくださいな。意見を聞きたいれす。

葉ちゃん、
そーなのよ。キャベツだって生き物だ。
だからね、
「ありがとねー、いただきますねー」
って気持ちをもっと持てる、そして、
ここに至るまでを想像する力を持てる人になんないとね。
私も心がけてるけど、ときどき他者の立場を忘れる。
気をつけたいものだ。

あとね。
あの入江はどんな匂い、臭いがしたのか。
それは知りたいところだった。

| まつのり | 2010/05/24 4:59 PM |
よっ先生、待ってました! 
しか〜し、ふむふむ〜。
イルカも猫も殺してほしくないし、牛だって豚だって鶏だって、実際に会ったり一緒に時間をすごしたら、やっぱり殺さないでって思ってしまう・・・なのに肉食の自分。でも野菜だって生きてるんだしさ、とも思うし。
誰かが誰かを食べる。その誰かを誰かが食べる。
キャベツだってイモムシに食べられると匂いでSOSを出すって本に書いてあった。だから「かわいそう」の論理で言うとキャベツだって痛いんだ。だから食べたらかわいそうだ。でも食べちゃうんだ。
オレゴンでフォアグラ反対キャンペーンに参加したことがあるのだけど、ああこれは「対話」じゃないなあってすごく感じてた。・・・・などなどのフラッシュバックが脳裏をよぎりつつ、読みました〜。
いろんな主張が存在するからこそ、世界なのであるけれども、「一方的」な主張はなかなか生産的にはなれないのだよね〜。これは特に、自分でも覚えておかねば。
| 葉 | 2010/05/21 1:16 PM |
一時、下北に住んでいて、下北の駅の近くの雑多なマーケットの中の総菜屋で、よく「くじらの南蛮漬け」を買いました。それさえあればご飯が食べられました。

表面的に波風たてないように「調査捕鯨」という名目にしている、その問題先送りも、もう限界だし、
アメリカなどの自分たちの価値観が一番で、それを他文化をもつ国や地域に押し付けるやり方にも、もう限界がありますね。
ここに、非難批判だけではなく、対話の道はないのでしょうか?対話のためには、まず相手を知る・・・そのための手段にこの映画がなりえているといいなあと思いながら、まつのりさんの記事を読んでいると、そうでもなさそうな。とはいえ、静岡にきてくれたら見てみますね。
| 谷澤 | 2010/05/21 7:56 AM |
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松本 典子
editor / writer